黄色い服の助っ人
雫ギャラリー電気工事の約束の日。
予定の時刻より40分ほど経った頃に黄色い服を着た見知らぬ男の人が現れた。
黄色い服の男は早足で敷地の中に入り込んでくる。
「おはようございますー」と、僕は反射的に優等生的な返事をしてしまう。
いったい誰なんだろうか。
そう思ったとき、後ろからもう一人の男がひょろっと現れた。
約束していた電気工事のおじさんだ。
二人は足早にギャラリーの周囲をぐるりと回り、部屋の中を入ったり出たりしながら、モウレツなスピードで
話し続けている。
自己紹介のないまま、事は進み続ける。
黄色いおじさんが誰なのかは全然分からない。
二人の話すモウレツなスピードの屋久島弁(おそらく)の会話を集中して聞いていると、そのなかに
“蛍光灯”とか“扇風機”という単語を聞き取ることができた。
おいおい、このギャラリーでは蛍光灯なんか一本も使う予定もないし、ましてや扇風機なんか設置するはずもないんだ。
いったいどうなっているんだ。
なにがおこっているんだ。
「僕は中間に住んでいまして、普段はジュエリーを、、、」
とりあえず、ビジネス本で読んだとおりに自己紹介をしてみるが、黄色いおじさんはいっこうにお構いなく部屋の中をチェックし続けている。
僕の話なんか全然聞いていない。
ここでは、マニュアルは通じないのだ。
仕方が無いので二人のやり取りを眺めていると、黄色いおじさんは僕が依頼していた電気屋のおじさんに工事の段取りをレクチャーしているようだった。
電気屋のおじさんの助っ人だったのだ。
黄色い助っ人のおじさんと電気屋のおじさんは一通り話をした後、僕に向かって一気に話かけてきた。
「クーラーはここには着かないから、この壁の上で。風のまわりが悪ければ、ここに扇風機をつけるんでコンセントをここに。配線の処理はウチにちょうどよいパイプがあるからそれをつかおうか。」
いったい、ここはどこなんだ。
僕は大学四年生の卒業旅行でフィリピンに行ったとき、ミンダナオ島からシャルガオ島に渡るためにボートを
チャーターするために現地の船乗りと四苦八苦して交渉したときのことを思い出した。
ここは集中しないといけない。自分の意見をしっかりと通さなければ絶対にダメだ。
「いや、扇風機は絶対に着けないです。場所はここで決めているので、電源は各部屋に一つずつ左右対称にセットしてください。」
集中しろ。
「コンセントは出来るだけ足元に設置していただいて、配管はそちらにあるものを使っていただいて結構です。」
ふう。言えた。
黄色い助っ人のおじさんは何故かニヤリとして、電気工事のおじさんとの打ち合わせに戻った。
屋久島の、僕の住む南のエリアでは電気屋を営んではいないが、工事の資格を持っていて近所の電気工事を請け負っている方が各集落に一人づつくらいいらっしゃる。(もちろん、きちんとした電気屋さんもあります)
電気屋さんと同じように、大工仕事を請け負う方もいらっしゃる。
この島に来たばかりのときはこのフリーランスの職人さんたちの存在にかなり驚いたのだけれど、いまではすっかり馴染んで仕事をお願いするためにお家まで訪ねるようになっている。
実際、かなり大変なことも多いのだけれど、僕の人生には今まで存在しなかったこの“ゆるやかで楽しい”関係性をついつい頼ってしまう。
誰かが工事をしているときは手伝いに行く、引越しのときは一緒に荷物を運ぶ、飲み会のときは一品ずつ持ち寄って楽しむ、など、屋久島に来て初めて知った事は本当にたくさん在る。(屋久島以外でもこういった関係を持たれている方々はいっぱいいると思いますが)。
あたたかい人の営み
そんなあたりまえのようなことが僕にはいつも新鮮で、ここでしっかりと行われこていることに僕はいつも救われているような気がする。
電気関係が得意な人が周りの家の電気工事をする。
なんてシンプルなんだろう。
職業ってこういうものなんだ。
僕はいったいここで何が出来るのだろうか。
どういう役割を担っていくのだろうか。
最近、そんなことを考えるようになってきた。

予定の時刻より40分ほど経った頃に黄色い服を着た見知らぬ男の人が現れた。
黄色い服の男は早足で敷地の中に入り込んでくる。
「おはようございますー」と、僕は反射的に優等生的な返事をしてしまう。
いったい誰なんだろうか。
そう思ったとき、後ろからもう一人の男がひょろっと現れた。
約束していた電気工事のおじさんだ。
二人は足早にギャラリーの周囲をぐるりと回り、部屋の中を入ったり出たりしながら、モウレツなスピードで
話し続けている。
自己紹介のないまま、事は進み続ける。
黄色いおじさんが誰なのかは全然分からない。
二人の話すモウレツなスピードの屋久島弁(おそらく)の会話を集中して聞いていると、そのなかに
“蛍光灯”とか“扇風機”という単語を聞き取ることができた。
おいおい、このギャラリーでは蛍光灯なんか一本も使う予定もないし、ましてや扇風機なんか設置するはずもないんだ。
いったいどうなっているんだ。
なにがおこっているんだ。
「僕は中間に住んでいまして、普段はジュエリーを、、、」
とりあえず、ビジネス本で読んだとおりに自己紹介をしてみるが、黄色いおじさんはいっこうにお構いなく部屋の中をチェックし続けている。
僕の話なんか全然聞いていない。
ここでは、マニュアルは通じないのだ。
仕方が無いので二人のやり取りを眺めていると、黄色いおじさんは僕が依頼していた電気屋のおじさんに工事の段取りをレクチャーしているようだった。
電気屋のおじさんの助っ人だったのだ。
黄色い助っ人のおじさんと電気屋のおじさんは一通り話をした後、僕に向かって一気に話かけてきた。
「クーラーはここには着かないから、この壁の上で。風のまわりが悪ければ、ここに扇風機をつけるんでコンセントをここに。配線の処理はウチにちょうどよいパイプがあるからそれをつかおうか。」
いったい、ここはどこなんだ。
僕は大学四年生の卒業旅行でフィリピンに行ったとき、ミンダナオ島からシャルガオ島に渡るためにボートを
チャーターするために現地の船乗りと四苦八苦して交渉したときのことを思い出した。
ここは集中しないといけない。自分の意見をしっかりと通さなければ絶対にダメだ。
「いや、扇風機は絶対に着けないです。場所はここで決めているので、電源は各部屋に一つずつ左右対称にセットしてください。」
集中しろ。
「コンセントは出来るだけ足元に設置していただいて、配管はそちらにあるものを使っていただいて結構です。」
ふう。言えた。
黄色い助っ人のおじさんは何故かニヤリとして、電気工事のおじさんとの打ち合わせに戻った。
屋久島の、僕の住む南のエリアでは電気屋を営んではいないが、工事の資格を持っていて近所の電気工事を請け負っている方が各集落に一人づつくらいいらっしゃる。(もちろん、きちんとした電気屋さんもあります)
電気屋さんと同じように、大工仕事を請け負う方もいらっしゃる。
この島に来たばかりのときはこのフリーランスの職人さんたちの存在にかなり驚いたのだけれど、いまではすっかり馴染んで仕事をお願いするためにお家まで訪ねるようになっている。
実際、かなり大変なことも多いのだけれど、僕の人生には今まで存在しなかったこの“ゆるやかで楽しい”関係性をついつい頼ってしまう。
誰かが工事をしているときは手伝いに行く、引越しのときは一緒に荷物を運ぶ、飲み会のときは一品ずつ持ち寄って楽しむ、など、屋久島に来て初めて知った事は本当にたくさん在る。(屋久島以外でもこういった関係を持たれている方々はいっぱいいると思いますが)。
あたたかい人の営み
そんなあたりまえのようなことが僕にはいつも新鮮で、ここでしっかりと行われこていることに僕はいつも救われているような気がする。
電気関係が得意な人が周りの家の電気工事をする。
なんてシンプルなんだろう。
職業ってこういうものなんだ。
僕はいったいここで何が出来るのだろうか。
どういう役割を担っていくのだろうか。
最近、そんなことを考えるようになってきた。

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